民民党本部に到着すると、今日の会議に出席するために集まった議員達の間には、異様な雰囲気が漂っていた。


「閣僚は何をやっているんだ!
増税の話を我々は何も知らなかったぞ!」


「何故、党に前もって話が来ないんだ!」


「こっちだって初耳だったんだ!
あれは、総理の独断なんだよ!」


「この国は独裁国家かっ!
誰だ、あんな人を代表にしたのはっ!」


「アンタだって投票していただろっ!今更何を言ってる!」


会議が始まる前から、この有り様である。


「あ~あ~、みんな荒れているねぇ。二日酔いなんだから、あまり大声出さないで貰いたいんだけどね」


私の姿を見るなり声をかけてきた幹事長が、おでこを押さえながら迷惑そうな顔でそんな事を呟いていた。


「やはり、増税には反対の議員が多いみたいですね……
総理も自分で撒いた種とはいえ、これでは議員から総攻撃を食らいそうですね」


私がそう言うと、幹事長は冷静にこんな事を言ってのけたのだ。


「総理に何を言っても無駄だね。
あれは財務省の立案なんだから……
文句を言うなら財務省に言わないとね!

よし、マナミちゃん。今から僕が財務省に行って直談判してこよう!
こんな茶番には付き合っていられない!」


「あっ!幹事長、会議はどうするんですかあ~~?」


もうあと10分もしないうちに会議は始まるというのに、党の『まとめ役』である幹事長が出席しなくて大丈夫なのだろうか?


いや、むしろ大丈夫じゃ無いから幹事長は、この会議から逃げるつもりなのかも知れない。


「行けえぇぇ~~!敵は財務省に在りぃぃ~~!」


慌てて呼び止める私の声を無視するようにして、幹事長は党本部の外へと出て行った。



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