「それはどうしてです、ご主人!」


「決まってるだろ!この町は原発の町だ!原発が無くなったら、この町の人間はやっていけなくなるんだよ!」


「しかし、安全が保証されない原発を再稼働させる訳にはいかないんです!福島のようなあの惨劇を、もう二度とこの日本で起こさせてはならないんだ!」


私は、ご主人の目を真っ直ぐに見据えて、そう説いた。ご主人は私の視線から顔を背け、声を震わせた。


「わかってるさ……そんな事は言われなくても分かってる……しかしね、もう何十年もこの町は原発を中心にして成り立ってきたんだ。今更、掛けた梯子を外されたって、私達はどうすりゃあいいんですか……」


返す言葉が無かった。


私と幹事長は、無言でその寿司屋の暖簾をくぐり店をでた。



「どうやら、問題は当面の電力不足だけでは無いようだね」


珍しく幹事長が、真面目な顔で溜め息混じりにそんな事を呟いた。



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