一時間程視察をした後、一旦休憩し私と幹事長は近くにあった寿司屋で昼食を摂った。勿論、さっきの学者は同行してはいない。


「それにしても、電力会社側が嘘をでっち上げているのなら、どうしてもっと強く追及しないんだろうね?」


「それは、解釈の問題でしょうね。電力会社側は活断層という証拠が無いから活断層では無いという主張をしていますし、一方では確証は無いが活火山の可能性が高いと主張しています。解釈の仕方によっては、どちらも間違っているとは言えません」


「なる程……グレーゾーンという訳だね?」


「まあ、法律では活断層の可能性のある断層上に原発を建設してはならない事になっていますが、政治的な思惑もあってうやむやにされている感もありますけどね」


「なる程ね……それにしても遅いね、大トロまだ握れないの?」


ふと、カウンターの向こう側に視線を移すと、そこではこの店の主人が寿司を握る事無く、私達二人の事を険しい表情で睨み付けていた。


「アンタ達、原発の再稼働に反対している組織の人間かね?」


「我々は、民民党の政治家です。今回、ここの原発の視察に来ています」


私は、店の主人に自己紹介し、自分の名刺を渡そうとスーツの内ポケットに手を伸ばした。すると、主人は嫌悪感の滲み出た表情を私達に向けて言ったのだ。


「悪いが帰ってくれ!ウチにはアンタ達に出す寿司は無い!」



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