「いや~、マナミちゃんも色々考えてるんだね……さすがは政治家!」
アンタも政治家でしょう……幹事長……
幹事長の最近の楽しみはと言えば、民自党の悪口を肴に酒を飲むこと。
私の民自党の景気対策に対する苦言を聞くと、幹事長は満足そうにブランデーグラスに口を付けた。
「よし、この調子で今夜は朝まで民自党の悪口で盛り上がろうじゃないかマナミちゃん♪」
「あ…朝までですか?」
幹事長には申し訳無いが、朝まで飲み明かすのは勘弁してもらいたい。
幹事長はああ見えて結構酒癖が悪いのだ。いつかの時のようにまた、裸踊り付きのカラオケ・オンステージでもやられては堪らない。
「幹事長、申し訳ありませんが……
私、明日の早朝より出掛ける所がありますので、あまり遅くまではお付き合い出来ないのですよ」
「なに、出掛けるってどこ行くの?」
「福井県です」
「福井県?」
これはなにも、幹事長の誘いを断る口実でも何でもなく、以前から予定していた事であった。
「福井県にいったい何しに行くの?
なんにも無い所だよ、あそこは」
「別に遊びに行く訳じゃありません。今『再稼働』の是否が問題視されている原発の視察に出掛けようと思いましてね」
福井県の原発……敷地の下を通っている地層が活断層かそうで無いかで電力会社と規制委の意見が食い違う問題の原発である。
「ふうん、原発の視察ねぇ……」
幹事長は、私の話を聞くと「それならば仕方が無いね」と、あっさりと朝まで飲み明かす事を諦めてくれた。
もう少しゴネられるのでは……と思ったが、これは意外だった。
私が幹事長の気が変わらないうちに急いで会計を頼んだのは、言うまでも無いだろう。
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