かなり危機的な状況である。
私の所属している政権与党、『民民党』の政党支持率は今や20パーセントを大きく割り、かなり危機的な状況に陥っている。
それというのも、あの総理の唐突な発言が引き金になったのは、説明するまでも無いだろう。
「消費税を上げようと思うんだけどね」
官邸で最初にその話を聞かされた私と幹事長は、思わず口に含んでいたコーヒーを、揃って総理の顔に吹き出してしまった。
「ブフーーッ!!」
「うわっ!! 何するんだ、汚い!!」
「総理、今なんとおっしゃいました?」
「だから、消費税を上げようと……」
「ブフーーーッ!!」
「おいっ!! やめろ汚い!!
今のはわざとじゃないのかっ!!」
「いや、滅相も無い。
それよりも、本気で言ってるんですか?総理……」
「勿論、本気だ。こんな事冗談で言う訳が無いだろう」
『寝耳に水』とはこの事である。
まさか、震災後のこの不景気の真っ最中に総理が増税を考えているとは、私も幹事長も夢にも思っていなかったのだ。
「今日、記者会見するから」
「今日って……党の承認は取らないんですか?」
「だって、反対するだろ?」
「そりゃ、まあ……」
「こういうのは、先手必勝だよ」
いつもの煮え切らない総理とはまるで別人のように、そう言って踵を返すその背中を、私達は呆気にとられて見つめていた。
「ありゃりゃ~行っちゃったよ~」
「これは大変な事になるぞ………………………
ところで幹事長、二度目はわざとやりましたよね?」
「だって、コーヒーかかった時の総理のリアクションが面白かったんだもん」
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