あいにく、我が家に客用の寝具なんて用意がない。
酔った頭ながら、風邪でもひかれたら大変、と毛布を千尋に手渡す。
『使って、風邪ひかれたら困る』
「俺は?」
『雅弘はこたつで充実でしょ、ちょっと頭と身体冷やしなよ』
「ひでー」
相変わらずの掛け合いを2人でしていると、千尋が少しとろんとした目で私を見つめた。
『うん、どした?』
「何でそんなに優しいの?」
『え?』
唐突な問い掛けに思わず首を傾げてしまう。
『愛だよ、愛。愛ゆえだね』
「...ふぅん」
『感じるでしょ?私の愛』
「うん、...そうだね、ありがと。毛布は美咲が使ってよ。俺もこたつだけで充分だし」
『え、でも』
「女の子なんだから身体冷やしちゃだめ、ね?」
そんな、急に女扱いなんかされたら、困る。
でも、でも、と毛布を押し付け合っていると雅弘が横からとんでもない事を言い出した。
「もう2人でベットで寝ろ。んで毛布は俺が使う」
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