――「あ。卓也。
私ね、明日からしばらく一緒に帰れないの。
山野先生の助手。引き受けちゃった」
「助手?」
帰り道。彼女が珍しく饒舌に話しだした。
「うん。放課後にね、実験の準備とか。するんだって。
それと、実際に前もって結果を調べるみたいなの。
科学の先生って大変なんだね」
「………」
「卓也?聞いてる?」
………。
俺が目の前にいても、編み物の目しか目に入れていない君にとっては。
何でもない事なんだろうな。
だけど、その程度の気持ちなら俺は二人で過ごすこんな時間は無くてもいいと思うんだ。
君も俺も、お互いにやりたい事を自由にやればいい。
俺だって、本当に俺を想ってくれる子と……。
「卓也?」
「……あ。ああ。いいよ。
じゃあしばらくは先に帰るよ」
「うん。ごめんね」