「ねえ、あゆ。俺の事、好き?」
編み物に夢中な彼女に訊ねる。
「うん。好きだよ」
彼女は俺の目さえ見ないでそう答えた。
「じゃあ、キスして」
「うー…ん、ちょっと待って…。
後でね」
…………。
編み目を数えながらまたしてもあゆは面倒臭そうにそう言った。
「なあ……あゆ」
「……あー…。もう、卓也。
少し黙ってて」
………。
つまんねぇ……。
俺はふて腐れて彼女から目を逸らすと、窓の外を見た。
………あ。
ふと、中庭にいる女の子と目が合った。
その子は俺に気付いてニコリと笑った。
俺も笑い返した。