アハハと笑いながら手をヒラヒラさせて彼女の元へと歩いて行く司の後ろ姿をジッと見つめながら心の中で呟く。

……『私には…何も感じない?』

――そんな切ない片想いの日々が半年ほど続いた後の、司の思いがけない言葉。

"俺達…付き合おっか"


からかわないで。
バカにしないで。


…本物じゃないのなら。
…辛いだけだから。


――「日誌、出してくる」

ガタッと立ち上がった瞬間によろめく足元。

「きゃ……」

「っ……!おい!」

咄嗟に抱き止めてくれた彼の腕。

細いのに……、ガッシリとしてる。
やっぱ、オトコノコだな…。

「あ……ごめ……」

「大丈夫か?あっぶねぇなぁ…」

「………」

私は司に抱き締められたままの態勢でふと、固まってしまった。

胸が苦しい。
腰に触れる彼の手が、熱い。


「……なあ…、菜緒…」

「え…っ…」

ドクリ。
心臓が揺れる。