「からかわないでよ。
あんたには彼女がいるでしょ」
私は彼から目を逸らし再び日誌を書き始めた。
胸がドキドキして、手が震える。
何で急にそんな事を言い出すのよ。
何でも話せる、気楽な男友達。
それだけのはずだったのに。……いつからだろう、司を見てると胸が苦しくなり始めたのは。
……ごめん、その冗談にはいつものように笑っておどけたりなんて出来ない。
「………」
私は唇をキュッと固く結んで黙った。
「瑞穂の事は、まあ、確かにあるけど…。
何て言うか……、お前が気になるんだよな…。
あの、………試さない?
俺、メッチャ彼女には尽くすぜ」
「…!!!な、…何よ、それ…。
駄目に決まってるでしょ」
私は彼を睨みながら言った。
「……だよなぁ…。
まあ、無理か……。
いや……、あの、……やっぱ忘れて?」
「……」
夕日で赤く染まる髪をさっとかきあげる司の仕草をじっと見つめる。
彼は……何を言い出したのだろう。
私が、……気になる?
もし、あなたの言う通りに試してあなたが私を好きだと思ったら、私のものになるの…?
それともまた、いつもの様に私をからかって
『信じた?……なーんてな。
面白かっただろ』
なんて言うつもりなの。