「夜は?夜も空いてないの?少しでいいの。裕香、誕生日なのよ。おめでとうって、直之に一番に言ってもらいたいから」
女は俺の腕に巻き付き、ふくよかな胸を押し付けた。
…やめてくれよ。そんなんじゃ、なびかないから。君にもう、興味が沸かないんだ。
「…ほんと、悪いけど…」
俺は腕をほどこうと、もう片方の手で彼女を押す仕草をした。
「どうして?どうしてよ〜…。あの日、直之にならって私、全てを捧げたのにぃ」
次第に涙声になる彼女を思いきり振り払いたい衝動と戦いながらも俺は笑顔を崩さない。
「残念だけど、本当に」