――――「私ね、……何がいけなかったのか。
まだ……分からないの。
だけど、卓也が他に目を向けるのなら、……私も、変わらないとね」
……聞き間違えるはずなんてない。
あゆの声を。
俺は後ろを見ないままで黙り込んだ。
「……あの……ごめんね?
立ち聞きするつもりなんてなかったんだけど…。
……分かったよ。卓也の気持ちは。
もう、……分かったから」
………そんなはずない。
君が俺の気持ちを理解するはずがない。
だって……まだ。
………何も伝えてないから。
彼女の気配が遠ざかっていく。
もう、いいのか。
それで君は、終われるのか。
「…………」
だけど、俺には何も言えなかった。
あゆを呼び止めて、気持ちを伝えたって……また、同じ事の繰返し。
もどかしく思い、一人考え込む毎日。
それに。
逃げ出したのは、俺の方だから。
あゆの側にいる、資格なんてもうないだろ。