――「あの子と……付き合うの?」

………?!

ふと、背後から聞こえた声に……振り返る事が出来なかった。




――『卓也とこうして、ゆっくりとゆるゆる過ごすのが、私、一番幸せなの』

風に髪を揺らしてニコニコと話すあゆを、俺はボンヤリと見ていた。

『……?なぁに?………欲しいの?』

彼女は食べていたエクレアを俺の口の前にスッと出す。

『……いらねぇよ』

……俺が伝えたいのは、そんな事じゃない。
もどかしく思う。

『……なによー…。
美味しいのに………。
卓也、時々すぐに怒るから…。

ま、……いっかぁ』

あゆは一人でブツブツ呟いてから、俺を見てニコッと笑う。

『…………』

ぷはっ。
俺もつられて笑い返した。

まあ、……いいよな。
時間はたっぷりあるんだから。

鈍感な彼女に……これからどう伝えよう。

……君を想う、この気持ちを。