――「なあ、一ノ瀬。
俺達、………付き合おっか」
………え。
オレンジ色の夕暮れに染まる教室。
日直日誌を書く手を止めて顔を上げる。
目の前にあるのは頬杖を付いた姿勢で私を見つめる優しい瞳。
紅く色付いていく二人きりの空間。
ただ、それだけでも十分な幸せを感じていたのに、目の前の男は私をさらに違う世界へといざなう。
「………マジで…?」
私が呟くとその顔にふっと笑みが現れる。
「マジで」
「……何で…?」
だけど………信じられない。
司は私を好きなはずない。
だって彼には佐山さんという彼女が隣のクラスにいるもの。