207室。
そこが、私の友人、広尾天空(ひろおそら)の病室だ。
彼も私のお父さんと同じで、未熟児で生まれ、身体が弱いらしい。
私がお母さんに用があって病院に来たとき、知り合った。
小学4年の時だ。

「遥、この子、広尾天空くん。同い年よ、遥と」

お母さんにそう言われ、私は目の前の男の子を見た。
恐いほど白い肌。女の子みたいな大きな目。細い手足。青いチェックのパジャマ。
私のお母さんの後ろに隠れ、スカートにしがみついていたその子は、背中を押され、前へ出てきた。

「私、佐々目遥。よろしく?」
「あ・・・僕、広尾天空。こ、こちらこそ・・・・・・よろしくお願いします・・・」

これが、私達の初コンタクトだった。
この頃の広尾はとてつもなく人見知りで、泣き虫で。
今もあまり変わらないけど。

まあ、あの頃に比べれば、まだ明るくなった。
・・・・・・ような気がする。

少なくとも、私と話すのに躊躇わなくなった。
私と話すとき、どもらなくなった。沈黙が少なくなった。

でも、あの頃とは確実に違ってしまった何かもある。