そう、佳花から、お菓子のさし入れを貰うようになった。
ことあるごとに作ったお菓子をくれるから、嬉しいんだけど。
甘いものはあまり得意ではないし、太る。
佳花みたいに、小食で食べても太らないみたいなのじゃないんだ。食べたカロリー全部胸にいくわけじゃないんだ。
私は、食べた分だけ足やお腹にいくし、胸にカロリーが回ることなんかない。回っていたら、今頃こんな申し訳程度のまな板ではないだろう。

素直にそのことを話したら、
「じゃあ、広尾くんにあげてよ~」
と言った。通常通りのほんわかした口調で。
佳花も、広尾に会ったことがあるのだ。

病院の自動ドアが開く。
中に一歩踏み入れた瞬間、消毒の匂いというか、病院独特の匂いがした。
私はまっすぐナースセンターに向かう。
中にいた看護師さんに聞いたら、私のお母さんは今ここにはいないという。
私のお母さんは、看護師だ。
身体が弱かった私のお父さんと恋をして、そのお父さんにもしもがあったとき、助けられるようにと看護師になった。
しかし、私が生まれてすぐ。お母さんは、産後で入院していた。
一人で暮らしていたお父さんは、その時発作を起こして、そのまま帰らぬ人となった。
でも、今、お母さんは看護師という仕事に誇りを持っている。