本当は分かってる。


笹原晶じゃなくて言葉が足りないのは自分だって。


伝えなきゃいけないのは自分だって。


それを人のせいにして――…こんな私が振られるのは当然だ。






本当は父親がそれ程酷い人間だとは思っていなかった。


浮気をした後、お母さんを今まで以上に大切にしてた。


家事をしなかった父親がするようになった。


お母さんの医療費と私の学費のために家庭を顧みず働いてたことも知っていた。



そして何よりお母さんがそんな酷い人間に惚れるわけがないってことも知っていた。




だけど。



だから。




――気に入らなかった…





私のせい、だから。




お母さんの身体が弱くなってしまったのも
今回の様にお母さんの心臓に負担をかけさせてしまうのも




嫌いな自分の居場所を探し求めてしまったから…




誰かに必要とされる温かい場所を
負い目を感じない逃げれる場所を


ただ自己欲のまま…


そんな醜い感情が渦巻いて“馬鹿”という一言に反応して…父親をビンタしてしまった。


自分のことを棚に上げて。