「……ゴホン。
…私の場合、お父さんの仕事は急に決まったから…それに別れという程でもなかった」




残念ながら…私には役不足だ。分かってたけど。




「でも、先は分からないとは言え必ず会えるという保証があったから……寂しくはなかったよ」




悲しかったけど、寂しくはなかった。


紙一重のようでこの言葉は全然違う。




「…だからさ、場合にもよるけど、弟君は学校が嫌いになったわけじゃないんでしょ?
それなら意地でも嫌われてでも引っ張り出して一緒に過ごすべきだよ」




不登校になってもそれだけ事情に精通してるってことは、今も連絡を取り合っているんだろう。

だから大樹君はこんなにも頭を悩ませ、苦しそうな顔をしている。


……本当、他人を心配しすぎるのは姉弟そっくりだ。
口では冷たくあしらいながら心の中では一番心配している。



なんて優しい人達なんだろう…



ま、絶対本人には言わないけど。




「……そか。
……………ありがと」




人のことになると饒舌なくせに、自分のことになると途端に不器用になる所も姉弟そっくりだ。



そして私はあまりの可愛さに思わず抱きしめた。
すっごく嫌そうな顔されたのなんて外の月明かりの加減のせいだからね。
私じゃないからね。