第二章 大好きなアイドル


 一


 十一月半ばの福岡の夜は九州といえどさすがに寒く、それに加えて先程まで雨もパラついていたため、物凄く冷え切っていた。

 日曜日の夜だが明日は仕事を遅番にしてもらった森内佳奈は地元の駅でダウンジャケットにジーンズと何時もより少し厚着をして職場の先輩を待っていた。

暫く待っていたら待ち合わせ相手が現れたのだが佳奈はびっくらこいた。

「ごめんごめん、出る前に牛乳こぼしちゃって」

 佳奈が驚いたのは遅れた理由にではない、やって来た格好にだ。

ここは九州ですか?と質問したくなるような寒さの中、青色のドレスに灰色のストールをまとっているだけ、ストッキングすら履いておらず、見ているだけで凍えてしまいそうだった。