三
「子供!子供ですか!」
ケータイを耳にあて、大きな声をだした森内佳奈は仕事中にも関わらず、電話の相手に向かって強い口調で話していた。
売り場の近くにある階段に向かった佳奈は、こっそりと売り場の方を覗きながら話しをしていた。
「何で早く言わないんですか、もう一カ月前の話しですよ」
温厚な佳奈だが、取り乱したように声を張り上げていた。どうやら電話の相手は金子美月のようだ。
美月は真理子のお腹の中に自分の子供がいることを説明していたのだが、そんな大切な事を一カ月も黙っていた美月に佳奈は腹を立てていた。