ハルに引きずられながら、山形さんが門の外へと出て行った。

「ビールが待ってますよ?大人しく帰りましょうね〜」

「仕方ないな〜じゃあね〜深谷君」

山形さんがふり返って手をふるので、姿が見えなくなるまで手をふり返した。

「あら?帰っちゃったの?お礼に、お茶でもと思ったのに」

母さんが、いつの間にか自分の後ろに立っていた。

はぁ…お帰り頂いて良かった…

「ただいま、母さん…」

もう一度同じ事を言うと、母さんが突然しゃがみ込んで自分の左手を握りしめた。

「…良かった〜ケガ治ったのね…」

「うん…」

包帯の取れた手首を真剣に見つめる母さんが、ため息をついてホッとするのが分かった。

「さ〜ごはん食べよっか〜お腹すいたでしょ〜?」

「あ…」

「ん?」

「ううん、何でもない…」

母さんと家に入りながら、自分はふくらんだ胃の辺りを押さえた。



何はともあれ、バレずにすんで良かった…

本当は疲れていて、すぐにでも横になりたい所だったけど…

温かい夕飯のにおいを感じて、自分は目をとじた…