「…二人とも、色々ありがとう…」

自分はふり返ってハルと山形さんを見ると、お礼を言った。

「明日、学校来るの?」

ハルが穏やかに聞いた。

「うん…本、選ばないと…」

「じゃあ、また明日な〜」

「うん、また明日…」

「見つめ合ってる所悪いんだけどさ〜僕、深谷君のお母さんに挨拶したいな〜」

山形さんがおねだりをするように、人差し指をあごに当てると言った。

「ダメです…」

「うわ〜即答〜」

「どうして、そんなに会いたいんですか?山形さん」

「いや〜ちょっと気になる事があってさ〜」

「え?何です…」

「晃ちゃん?帰ったの〜?」

ちょうどその時、聞きなれた声が扉の向こうからして、玄関が開いた。

「あ、どうも初めまして〜山形と言います」

「あら、あらあら…」

母さんはエプロン姿で、山形さんの存在に気づくと、あらあらを連発した。

「こんばんは〜」

「あらハル君も、こんばんは〜」

母さんは満面の笑みで、ハルに手をふった。