「…先生、あの本は…」

自分は、あの目立つ本の束を目で探した。

「ああ、あれですか〜ちょっと、いろいろ試している最中ですよ〜?」

「え?」

嫌な予感がして、眉をしかめた。

「先生ですか?本を冷蔵庫に入れたのは」

高田さんが、麦茶を運んで来てくれながら言った。

「え?本を冷蔵庫に入れて、どうするの?修子ちゃん」

ハルがちゃぶ台の前に座ると、たずねた。

「いえね〜もしかしたら、文字が復活するかな〜っと思いましてね〜?」

先生は可愛いらしく笑うと、人差し指を立てた…

「じゃあ、水の中に入れているのも同じ理由ですか?」

高田さんが手際良く出前のざるソバを配り、ピザを皿に移して、取り皿とハシを並べながら、たずねた。

「ええ〜すみません、洗いおけをお借りしました」

「いえいえ」

「わ〜…本が水の張ったおけにつかってるのって、何かシュールだわ…」

興味を持った山形さんとハルが、流しの中のおけをのぞき込むと言った。