「…深谷君、着替えとタオルここに置いとくからー」

シャワーを浴びていると、扉越しに声がかけられた。

「あ…はい…」

「あーそれから、ちょっと出かけて来るけどー、家の中のもの好きに使ってね。じゃ行って来るからー…」

ハルが遠ざかる気配がして、自分はあわてて風呂場の戸を開けると顔を出した…が、バタンという音を残してハルが出た後だった。

お礼を言いそこねてしまった…

一つため息をつくと、シャワーに戻った。



あの浜辺から歩いて10分ぐらいの所に、ハルの家はあった。

家族は父親の海外赴任について行ったらしく、ハルはこのアパートの2階に一人暮らしをしていると話してくれた。

一週間ぶりに帰宅をすると、アパートはものすごい熱気がこもっていた。

玄関を開け、まず目に飛び込んできたのは、大量のぐってりとした植物達だった。

ハルは、あははははーと笑いながら、部屋のあちらこちらにある草花達にかけ寄り…

「ごめんな、本当悪い!」

と、謝って窓を開け放った。

すると風が通り、熱気が外に逃げて行く…