「ダメ…ではないのですが、万一、うっかり私がこの戸を開けて向こうへ行ってしまった場合、私の場合、自力で帰って来れないような…」

困った顔をして高田さんは、一枚の戸を指差した。

「それは大丈夫ですよ〜その時は、私か深谷君が迎えに行きますから〜」

「…」

深谷少年がそのセリフを聞いて、暗い表情をした。

「でも修子ちゃん、高田さんの行動をいつも把握している訳じゃないし…」

ハル君が気の毒になったのか、高田さんの援護に回った。

「そうですね〜…じゃあ、この押し入れは、あきらめましょうかね…」

先生はとても残念そうに、用務員室の押し入れを見ながら、ため息をついた。

先生…絶対ドラ〇もんとか、好きでしょう…?

「…まぁそこはムリとしても、いい考えですよね〜」

僕は改めて、夕日に赤く染まった用務員室の中を見渡した。