「…深谷君、行きましょうか〜?」

「はい?」

突然、目を開いた先生の視線が、数段下の段に立っていた自分の目線の高さと、同じになった。

その瞳に迷いはなく、真直ぐに自分を見つめる表情は、大魔法士ルドそのものだった…

「説明は後で…とにかく急ぎましょう。深谷君、あの呪文は使えますか?高速移動の…」

「はい…先生は?」

「呪文さえ聞けば、行けると思います」

「呪文は、こうです…」

自分は魔法を発動させながら、ゆっくりと呪文を唱えた。

「分かりました…゙マー・カイル・ユー・シエル・セー・リエル゛ですね、ありがとうございます…私の後に着いて来て下さい。ここから脱出しますよ〜長居は無用です」

そう言って、先生は微笑んだ。

「はい…」

魔法の発動も危なげなく、完了している…さすが天才大魔法士だ…

先生は軽く階段をけると、ラセン階段を流れるように泳ぎ出し、下へ下へと回りながら、図書館の最下層を目指した。

スピードの差が、魔力の差を物語っている…