「がはっ」

大量の水を飲み込んだせいで、胃の辺りが気持ち悪い…

激しい咳と共に海水を吐き出して、やっと新鮮な空気が肺に入ってきた。

さっきから鳴り出したタイマー音が、耳障りなほどうるさい…

「はぁはぁはぁ…」

この感じは、全力疾走した後の息苦しさにそっくりだ…

いきなり入ってきた酸素に、肺が悲鳴を上げている。

一瞬目の前が白くなり、胸を押さえて体が床へと崩れ落ちた。

「…ぅえっ」

床にはまだ、引き切らない海水が残っていたらしく、思い切り倒れ込んだ拍子に飲み込んでしまった。

そのおかげで自分の遠のいた意識が戻り、タイマーを止めなくてはという発想にようやくたどり着いた。

のろのろと視線をダイバーウォッチに移すとタイマー音を止め、隣で倒れている山形さんに向かって声をかけた。

「…山形さん…生きてますか?」

山形さんは返事の代わりに、激しく咳込み始めた。

そして顔を動かすと、自分に視線を向けた。