「…そこまで知ってるのが、むしろ腹ただしいです…」

眉間に指を当てて、苦悩している様子は、ロイズにそっくりです…

「まぁ…とにかく、ここを出ましょうか?」

私は笑顔で、ここから出る事を提案しました。

「…さっき読んでおけば良かった…」

うな垂れた深谷君が本を見つめて、呟いています…

「ロイズ…生きて帰る方が大事ですよ…フレアが心配して上で待っていますよ〜」

その言葉で我に返ったようで、良かったです。

深谷君は大人しく本を元に戻すと、私達は出口の扉を出て、上へ向かうためにラセン階段を上って行きました。



「…そう言えば、ユラ…山形さんの姿を見かけませんでしたね〜」

私は階段を上りながら、思いついた事を口にしました。

私の前を行く深谷君が少しヘコンだように見えるのは、気のせいでしょうか…

「…すいません…時計を持っているのはハルだから、山形さんに30分後とか言っても意味なかったです…」