巨大な岩山の上に建っていたフレイヤース宮殿は、今は平らな砂地の上にたたずんでいる…

廃墟のように人から忘れられた、かつての王国の名残がそこにあった。

「…予想以上に壊れているね…」

僕はため息と共に、思わず言葉にしていた。

「…残っている方ですよ…」

戸川先生が静かに言った。その声は、まるで大魔法士ルドのようだった…

「…先生、思い出したんですか?」

「少し…さっきから白昼夢なのか、デジャヴなのか…いろいろ見えて困っています…」

ふり返らずに戸川先生は答えた。

高田さんが気遣うように、戸川先生を見つめている…

「ハル君は、どう?」

隣のハル君が静かになってしまったので、声をかけてみた。

「オレは何も…山形さんは?」

「僕はこれからくる感じ…もう少し近くに行くと、きそうだわ…」

僕は眉間に指を強く押し当てた。
さっきからそこが、ムズムズして気になってしょうがないのだ…