ハルは、こんな状況にもかかわらず…楽しげに、穏やかに笑った。

「…無事ここから脱出できたら、ぜひ…」

「はははー、そうだね」

「…ところでハル…ちょっと聞いて欲しい話が、あるんだけど…」

「何?」

「…信じる信じないは自由だけど…実は、ここに良く似た場所が書いてある本を読んだ事がある…しかも、つい最近…」

そう言いながら、自分は心音が早くなっていくのを感じた。

無意識に手が胸の名札にいく…

「それ本当かい?!何て言う本?」

「『海底の王国』…ちなみに、これは児童書です…」

「…え?」

ハルの表情が固まった。

無理もない…正常な人の反応だと思う…自分で言っていて苦しさを感じる…

物語の話に命をあずけろと言うのは、無理がある…でも…

「…分かった…くわしく教えてくれる?深谷君」

ハルの反応は意外にも早く、あっけなく肯定されて、拍子ぬけしてしまった。

「信じてもらえるとは、思わなかった…でも良かった。手短に話します…」

この時ハルが、なぜ自分の話を信じてくれたのか…いくら考えても不思議でならない。