気が重い。
 どうやって切り出そう。
 辺奈商事を出て家路を辿りながら、真純は何度もため息をついた。

 辺奈商事の応接室で、涙が止まらなくなった真純を、瑞希は落ち着くまで黙って待ってくれた。
 やがて真純が落ち着きを取り戻すと、真純が言いにくいなら自分がついて行って、代わりにシンヤに話そうかと申し出てくれた。

 しかし面識のない瑞希が突然やって来て、ハッカー呼ばわりしたら、シンヤが動揺して逃げ出してしまうかも知れない。

 そうなったら真純としては困るのだ。
 シンヤには色々と、問い質したい事がある。

 瑞希の申し出を断って、自分で話すと言ったものの、やはり気が重い。

 おそらく瑞希の言った通り、シンヤはハッカーなのだろう。
 本人が否認しても、出て行ってもらうように瑞希には言われている。

 シンヤが出て行ったら、もう二度と会えない。
 会ってはいけない。

 たとえ辺奈商事の情報を漏らしたりしなくても、ハッカーと接触している者に、会社は仕事を任せたりしないだろう。
 最悪、真純はクビになるかもしれない。