鍋の底を木べらでガンガン打ち鳴らしながら、真純はシンヤの部屋に入った。
 呼んだくらいでは起きない事を、昨日の朝学習したからだ。

 さすがにシンヤも目を覚ましたらしく、唸りながら頭を抱えて身を縮めた。

 布団から出ようとしないシンヤに、真純はベッドの側まで歩み寄り、頭の上でもう一発鍋を叩く。

 シンヤは頭を抱えたまま、か細い声で懇願した。


「わかったから……やめて。頭痛いし、気持ち悪いんだ……」
「二日酔いだよ、それ。弱いくせにバカ飲みしたんでしょ」


 シンヤはのろのろと身体を起こし、俯いたまま片手で顔を覆った。


「正直、あんま覚えてない……。どうやって帰ってきたのか……。どうやって布団に入ったのか……」

「何? 記憶も飛んでるの?」


 真純は驚いて目を見張る。