翌朝、真純は苛々しながら階段を上った。
 先ほどから何度も呼んでいるのに、シンヤが部屋から出て来ないからだ。

 確かにゆうべは寝たのが、深夜二時になろうとしている時間だった。

 二十歳という年齢のため場数を踏んでいないというのもあるだろうが、シンヤは真純ほど酒に強くないようだ。
 缶ビール二本目で、ほろ酔い状態になっていた。

 そのせいで眠いのは分からなくもないが、さっさと起きてもらわないと、真純自身の予定にも支障を来す。

 元々コンピュータ業界で働く者は、夜型人間が多い。
 シンヤもそうかもしれない。

 真純は以前、辺奈商事に内勤で勤めていた。

 当時は情報システム部でデータ入力を行っていたが、九時の始業時間に出社している者は、瑞希以外に夜勤明けの技師やシステムオペレータと協力会社の数名だけだ。

 主任やチームリーダーでさえ、きちんと出社しない事が多い。

 そういう立場の人は、日中、出張や取引先との電話応対などで自分の仕事ができないため、誰にも邪魔されにくい深夜に仕事をする。
 そのため、翌日出社が遅くなるのだ。