クリスマスイヴの昼過ぎ、真純は久しぶりに辺奈商事本社ビルに向かった。

 朝からどんよりと空が低く、空気は刺すように冷たい。
 天気予報では雪が降ると言っている。

 今日は土曜日で会社は休みだが、その後の事を瑞希から聞く事になっていた。

 シンヤがダッシュのパスワードを取得した翌日、ダッシュの締め出しに成功したので、バックアップのマシンを使って、システムは平常通りに運用を開始した。

 今日はマスコミの姿もない。
 二階のカフェも開いている。
 いつもと変わらぬ日常が、なんだかまぶしく感じた。

 七階に上がって呼び鈴を押すと、瑞希が直々に現れた。
 一緒に応接室に入り、事の顛末を聞く。

 ダッシュは地元一流大学の工学部博士課程に籍を置く学生だった。
 主にコンピュータのハードウェアの面で研究を行っていたらしい。
 それでソフトの面では間抜けだったのかも、と瑞希は笑う。

 ハルコから閉め出した後、ダッシュから事情を訊くため、瑞希は警備員を向かわせた。