いつものように辺奈商事本社ビルの二階で、書類の受け渡しが滞りなく終了した。
このところハルコが反抗期だとかで、瑞希は常に忙しそうにしている。
今日も真純がコーヒーを飲み終わるのを待たずに、先にカフェを出て行った。
残された真純は、のんびりとコーヒーを飲み干し、トレーを持って席を立つ。
何気なく出入口に目を向けると、そこにいた男と目が合った。
社内で一番会いたくない奴、高木だ。
気付かぬフリをしてやり過ごそうにも、バッチリ目が合ったことを相手も把握している。
その証拠に、こちらを向いてヒラヒラと手を振りながら、ニヤニヤと笑い出した。
こいつが自分に対して、友好的な態度を取る理由などない。
おそらくシンヤと付き合っていることを、からかうつもりだろう。
不愉快きわまりないが、出入口はひとつしかない。
真純は腹を括って、出入口に向かった。
店の外へ出た途端、高木が親しげに話しかけてきた。
瑞希はもう上に上がったのかと訊かれ、それに答える。
こいつがそんな事を訊くために、わざわざ声をかけたとは思えない。