なるべくホテルから遠ざかるように、進弥は当てもなく街をさまよい歩いた。
 しばらくして充分ホテルから離れた路上で荷物を置くと、大きくため息をついてその場にしゃがみ込む。

 セキュリティ会社は警察ではないので、それほど深追いはしてこないと思うが、実家へは戻らない方がいいだろう。

 今夜これからどうしようと考えていると、頭の上で声がした。


「そこ、どいてくれる?」


 顔を上げると、ショートカットの小さな女の子が無表情に見下ろしていた。

 なんの事か分からず、進弥がぼんやり見つめ返すと、彼女は手にしたカードをヒラヒラと振りながら、苛々したように言う。


「邪魔なんだけど」


 ふと振り返ると、進弥の後ろにはタバコの自動販売機があった。