ほんわかした温もりに包まれて、脳がゆっくりと目を覚ます。
 けれどまだ、目を開きたくはなかった。
 目覚まし時計が鳴るまでの間、もう少しだけこの幸せな微睡み(まどろみ)の中に浸っていたい。

 目を開かなくても分かる朝日の光に背を向け、真純は温もりの中に潜り込んだ。

 顔をすり寄せた大きな温もりの壁から、心地よい静かな鼓動が聞こえてくる。

 鼓動——?

 違和感に気付き、パッチリと目を開く。
 布団の中、目の前に巨大な壁が横たわっていた。
 恐る恐る顔を上げると、至近距離でシンヤが目を細めた。


「おはよ」


 一気に眠気が吹っ飛んだ。
 同じ布団の中で、シンヤに抱かれて気持ちよく眠っていたらしい。


「なんで——っ?!」