シンヤが出て行って、一週間が過ぎた。
真純を攫った男は、あれから二度と姿を見ていない。
シンヤに手出しをするのは、懲りたのだろう。
シンヤからも、何の音沙汰もない。
ハッカーを止めたのか、未だに続けているのか定かではない。
真純は新しいユーザIDとパスワードを発行してもらい、これまで通りに辺奈商事と家を往復していた。
大声で泣いてスッキリしたせいか、翌日には案外吹っ切れていた。
時々シンヤの事を思い出す事はあるが、瑞希を恨んだりする気持ちは湧いてこなかった。
ただ、たった三日しかいなかったのに、シンヤがいないというだけで、家の中がやけに広く冷たく感じる。
いっそ本物の犬を飼おうか、と考えた。
いつものカフェで犬を飼ってもいいかと切り出すと、瑞希は眉をひそめた。
「また得体の知れない男を拾ったの?」
「違うよ。本物の犬。庭じゃなくて家の中で飼いたいから、大家さんにお伺いを立ててるんだけど」