シンヤは入口の外へ顔を出して、男を見送りながら呑気につぶやく。
「いいのかな。この部屋、開けっ放しで行ったけど……」
振り向いて部屋に戻ってきたシンヤは、先ほどまでの裏の顔は微塵も感じさせないほど、いつもと変わりない表情だった。
やっぱり二面性のある奴だ。
シンヤは真純の側まで来ると、少し身を屈めて、心配そうに顔を覗き込む。
「真純さん、大丈夫? ケガとかしてない?」
「大丈夫。縛られてただけだから」
真純は視線を逸らし、自分の手首を撫でた。
その手を取り、シンヤが握った手の親指の腹で、手首に残る跡を撫でる。
「跡がついてる。痛かったでしょ?」
「平気。大したことないから」