どうしてこんな事になっているんだろう。

 真純は自分の置かれている状況が、今ひとつ飲み込めずにいた。

 ここは雑居ビルの一室で、どこかの会社が倉庫代わりに使っているようだ。

 元々は会議室だったのかもしれない。
 壁際にはホワイトボードがあり、その前には丸い会議机が置かれている。

 だが部屋の中は雑然としていて、折りたたみ式の長机やスチール製の棚の上には、段ボール箱が無造作に積み上げられ、床には綿埃の塊が、あちこちに転がっていた。

 真純は薄暗い部屋のほぼ中央で、パイプ椅子に座らされていた。
 口はガムテープで塞がれ、両手は椅子を抱えるように後ろ手で縛られている。
 足も縛られているので、逃げ出す事も思うように声を発する事も出来なかった。

 目隠しをされて車で連れてこられたので、ここがどこだか分からない。

 あまり安心できる状況ではなさそうだが、とりあえず今すぐ命の危険があるわけでもなさそうだ。