彼女は急に目が覚めたような顔をした。
これらの言葉にほだされて、逆プロポーズを決意してしまったのだ。
彼女の本気度を舐めていた。
ただプロポーズされたい、ウェディングドレスを身に纏いたい。
そう憧れているだけだと。
しかし彼女は自らの憧れも美女としてのプライドも、
すべて捨てて逆プロポーズをするという。
俺の自信は所詮根拠がない妄想だったのだ。
避けていた事実を現実として突き付けられてしまった俺は、
悔しくて苦しくて腹が立って、泣きたくなった。
怒ったり泣いたりしない代わりに、
「これで、最後ね」
敗けを認めて彼女にキスをした。
上手にも優しくも出来なかった。
彼女への気持ちと彼氏とやらへの嫉妬をぶつけるように押し付けた、
自分史上最低のキスだったと思う。
そして俺と彼女の関係は終わった。
告白さえできなかった情けない俺は、せめて彼女の幸せを願おうと心に決めた。