いつか彼女に思いを伝えられる瞬間が来たら渡そうと思っていたものを、

ずっと首にかけていた。

チャンスがいつ訪れてもいいように、肌身離さず身に付けていた。

買ってから時間が経ちすぎて、いくらか傷がついているだろう。

それでもチャンスを逃してしまうよりはマシだと思っていた。

思ってはいたのだ。

再三訪れていたチャンスをことごとく棒にふっていたことに気付かずに。

事態の解決の目処がたったのは、その彼氏とやらの海外転勤が決まったからだった。

彼女は結局プロポーズされないまま落ち込んでいた。

二人が上手くいくわけがないと高を括っていた俺は、調子に乗ってこんなことを言った。

「絶対その人と結婚したいんじゃなかったの? それって、海外転勤ごときで揺れる程度の気持ちだったんだ」

だから、もう諦めなよ。

「あの人と結婚するって決めてるなら、待つでも別れるでもなく、ついていく! ってくらいの気持ちが必要なんじゃない?」

そんな気持ち、ないんだろう?

だから、もう俺にしなよ。