ある日、俺は過去のデータを取るために下の階にある倉庫へと向かった。
倉庫は階段のそばにあるし、エレベーターを使うより階段を利用した方が早い。
やたらと音が響くその階段へ足を踏み入れた時、
不可解な物音がするのに気がついた。
コツコツという不安定な音。
時おり聞こえる
「んっ……」
という声。
好奇心に背中を押されて下を覗くと、
大きな段ボールを肩に担ぐ彼女だった。
フラフラおぼつかない足取りは、
今にもこの階段から転げ落ちそうだった。
こんな時くらい誰かに頼ればいいのに。
隣にいるくせに、青木は何をやってるんだ。
……いや、違う。
「チャンスを逃すな」
沢田の言葉がリフレインする。
周りには誰もいない。
今彼女を助けてやれるのは俺しかいない。
俺しか、いない。