「悪いけど、お前には負ける気がしない 」
青木は自信満々な顔でそう言って、
俺のジョッキに入っているビールを全部飲んで立ち上がった。
俺は何も言い返せなかった。
そして青木は再び彼女のいる方へ。
「丸山、お前は行かねーの?」
沢田が顎で促すが、俺は首を横に振った。
俺が行ったところで、何もできない。
何も話せない。
突然割り込んでおいて黙っているなんて、
ただの変な奴だ。
「ビール、おかわり」
「はいはい」
沢田は呆れながらテーブルに設置されている呼び鈴を鳴らした。
この時から俺と青木はタバコを一切口にしていない。
禁煙は難しいと言われるけれど、
きっかけとモチベーションさえあれば
案外簡単だった。
あっけないくらいに。