女子たちは沢田の奥さんが妊娠した話から発展して、
恋愛話に花を咲かせているようだった。
「私、もう何年も彼氏いないよー」
彼女の声が耳に届き、意識がそちらに向いた。
へぇ、今は彼氏、いないんだ。
「そうなんだ。仕事、バリバリ頑張ってるもんねー」
「でも、彼氏が欲しくないわけじゃないんだよ?」
「どんな人がタイプなの?」
俺の耳は彼女の声をより鮮明に聞き取ろうと他の音を遮断する。
「優しい人、かな」
俺、できる限り優しくするよ。
青木なんかより、ずっと。
「ありきたりすぎ。他には?」
「うーん、そうだなぁ」
彼女が悩んでいる間に煙を吐いておく。
吐き終わるとより彼女に集中するために、グッと息を止める。
数秒後、彼女は言った。
「タバコを吸わない人がいいな」