「真奈美からは言われる?」

「ああ、言われるな」

その時の真奈美の顔が浮かんで、顔が熱くなった。

「どういうシチュエーションで?」

聞くなよ。

「セックスの時。すげー言う」

「なんだそれめちゃくちゃかわいいな」

「そうなんだよ」

いつもケンカばっかりしているあいつが、俺に力一杯しがみつきながら涙目で好き好き言う様は、もう、本当に、ヤバい。

「なのにお前は言わないの?」

「うるせーな」

言えないんだよ。

まだ本気じゃなかった頃は、可愛いとかキレイとか思ったままを普通に言えたのに。

本気になってからは恥ずかしくなって、言えなくなってしまった。

そもそも、好きとか愛してるとか、そういう言葉っていざという時に思い切って言うもんじゃないのかよ。

しょっちゅうアイラブユーって、欧米かよ。

ここは日本だバカヤロー。

「お前らはどうなんだよ。いずみなんか、それこそ好きとか言わなそうだけど」

いずみはクールだし、普段あまり感情を露にするタイプではない。

「案外言うよ。あいつああ見えて、俺と二人の時はニャンニャン系の甘えん坊だから」

「嘘だろそれ全然想像できねーよ」

「ホント。典型的ツンデレだよ。外では全く出さないけどな」

碧といずみは昔から熟年夫婦のように落ち着いていた。

気が強くて行動力があり、しっかり者のいずみ。

碧はそんな彼女に寄り添い、守り、支えている。

そんな二人にも、互いにしか見せない顔があるのか。

中1の頃から15年以上付き合ってんのに、今でもラブラブなんだな。