その瞬間、今までの辛さが爆発した。
「オマエ女だろ…まだ15の。感情押し殺して心で泣いてんなよ。ちゃんと涙流せよ。」
俊の言葉に私は一気に涙が溢れてきた。
ずっと………みんなが言ってくれた言葉を待っていたのかもしれない。
千夏も言おうとしてたのに、私が阻止してたのかも…。
複雑そうな顔が今蘇る。
私はとんだドアホだ。
誰よりも大切な親友が居なくなってから気付かされるなんて。
「泣き止んだ?」
蒼空が聞く。
「うん…大丈夫。」
「良かった。唯奈ちゃん、俺らと……友達になろうよ。」
蒼空の思いがけない言葉に動揺する。
「え…?友達?……。」
「嫌なのか?」
海斗が不満そうに言う。
「私友達は千夏以外にいたことないから………。」
「信じあえる仲間になるんだ。」
亮汰が言う。
「信じれる…仲間?」
「男を信用出来ないのも色々過去に合ったことも、調べて知っている。けど…俺らを信じてほしい。」
楓が真剣な顔付きで言う。
「私は…どうしたらィィの?」
「そのままでィィ。自然にわかる。」
俊がそう答える。
自然に……か。
「いっそのこと、龍鬼の姫になるとか☆」
「何それ。」
海斗が言っている事が全くわからなかった。
「龍鬼みんなで守る女の子だよ。」
蒼空が言う。
「え………私守られなくても…。」
「あ、そうか☆じゃあ、最強の姫だね♪」
海斗が嬉しそうに言う。
「どういうこと?」
「唯奈ちゃんなら、一緒に喧嘩できるね。勿論、良くない族と。喧嘩仲間は大丈夫。」
楓が言う。
「喧嘩仲間?」
「見たらわかる。」
亮汰が言う。
私は疑問点が沢山あったが、姫とやらになるのは決まったみたいだ…話が先に進んでる。
「本当に私てィィわけ?」
俊に聞いてみた。
「オマエがィィんだ。」
「……??そう…やってみる。」
『わーい☆』
双子が喜ぶ。
すぐにみんなに知らされた。
族の仕組みはよくわからない。
けど……みんな楽しそうなのは分かった。
それと、ここの人はみんな人思い。
次の日からみんなで登校する事になった。
学校に着くと生徒がザワついてる。
そりゃそうだよね…私が一緒にいるんだもん。
………変に決ってる。
私達は教室に向かいそれぞれの席に座った。
先生達もビックリしている様子。
双子&亮汰はそれを見て笑ってる。
「唯奈ちゃんって体育祭やったことあるの?」
蒼空がイキナリ話しかけてきた。
「あ…唯奈でィィよ。“ちゃん”って柄じゃないから(苦笑)うーん…小学校の時の運動会くらいかな。」
「えーーーっ!!!まぢ?」
海斗が勢い良く返す。
「私中学からこんなんだったから…。」
「ここではそうもいかないよ?ニコ」
楓が意味ありげに話す。
どういう事かわからない私…。
亮汰が張り切って言う。
「来月の体育祭は真剣勝負だぜ?」
続いて海斗が話す。
「学年関係なしの体育祭だからな。それぞれの族もここぞとばかりに殺るぜ?(笑)」
「へー…変なの。」
私がそう答えるとみんなが笑う。
ここが不良校なのをスッカリわすれてた私。
「毎年救急車待機してるんだよ!」
蒼空が言う。
「なんで?」
「体育祭=大きな喧嘩と思った方がィィよ。怪我しないようにね♪」
楓が分かりやすい説明をしてくれた。
なるほど………って、そんなの有り?
『有り!!!』
俊以外の4人が口を揃えて言う。
私は苦笑い…どうしてそんなに本気になるのかその時は知らなかった。
放課後、1枚のプリントが配られた。
朝話していた体育祭の内容だった。
そこには――――――――
“体育祭成績優秀者は、単位10時間与える”
=足りなくなった教科単位にあてれるって事か。
“また成績優秀者は20名までとする。”
と、書いてあった。
約600人中…20人て…(苦笑)
通りで真剣になるわけだ。
退学者が絶えないこの学校……先生方も必死か。
毎年800~900人いるのに今でさえ600人。
問題児ばっかだし、仕方ないんだけど。
このご時世に中卒は辛いもんな。
仕事出来ねーか…普通に。
その後、倉庫に着きみんな種目を確認していた。
男子の種目に棒倒しがあった。
今時?なんて思ったけど…女子の騎馬戦もある。
小学生みたい。
男が下ね~…女子少ないしそうなるか。
3年が女子多いんだよなあ…。
まあ、問題ないか。
『騎馬戦の下は任せろ!』
双子&亮汰に言われた。
「ありがと…(苦笑)」
そう言うと、3人はまた体育祭の話をひたすらしている。
楓は常に携帯で誰かと話してる様だった。
ソファーに寝そべっている俊に話しかけてた。
「ねえ。」
「ん?」
「楓忙しそうだね。」
「ぁあ。」
こっちを見ることなく答える。
「誰と電話してるの?」
「気になるのか。」
やっとこっちを向いたが機嫌が悪そう。
私何か気に障るような事言った?……
「いや、別に…。」
「他の族の動きとか色々情報のやりとりしてんだよ。」
「ふーん。」
「はぁ…疲れた…。」
そう言い楓がソファーに座ったので、楓のところに向かった。
「大変なの?」
「まぁ…ね。でも、下が動いててちょっとした事でも、すぐに連絡くれるから感謝してる。」
「そっか。」
私3人の体育祭への熱いトークを聞きながら、楓の横で眠った。