それから、ナースにあの人の風貌などを言い、なんとか病室を聞きたどり着き、ドアをノックした。




「はい。」




中から声がしたので、私がドアごしに言う。





「あ、あの…三浦唯奈です!」




ガラガラ!!!!


突然勢いよくドアが開き、あの人が目の前に現れた。




「どうしたの!?さっきは大丈夫だった!?」







心配そうに聞く彼。





「あ、う…いや…。」





どうしても、拒否反応をしてしまい吐きそうになる。
俯き前を見れなくなった。






「あ、さっき倒れたから気分悪くなった?(汗)」






なにも答えれなくなった唯奈に楓が言葉を挟む。





「さっきは、酷く怒鳴ってしまってすまなかった。」



「あ、いやー、俺もビックリして何も言えなかったんだ。」





笑顔で答える彼。




「でさ、唯奈のことなんだけど…」





亮汰が私の代わりに説明してくれた。
楓は何故龍鬼といるのか、男の人と話すのが苦手などを話してくれた。
私のために申し訳ないと思う。






説明後…




「そうだったんだ。……無理もないさ、俺も唯奈ちゃんが引っ越してから訳を親から聞いたんだ。」



………沈黙する病室。







「とりあえず、…俺らの病室で話しないか?」





亮汰が言う。






「わかった。行こうか。」





すぐに承知してくれ、みんなのいる病室へ戻った。




「あれ、…話はどうなったの?」






蒼空が不思議そうに言う。





「みんなと一緒の方がィィと思って来てもらった?みたいな。」





亮汰が言うと、双子はキョトンとしていた。




「ま、そーだろな。唯奈最近人間になったからな。」





海斗が冗談混じりで言う。




その言葉に不安な空気が吹き飛び、私と李來以外みんな笑った。






「俺海斗!」



「双子なんだけど、俺が弟の蒼空。」



双子が早速自己紹介。



「俺、亮汰。」




双子に続いて亮汰が話す。





「俺は副総長の楓、そして総長の俊。」




彼はびっくりもせず自分の事を話す。




「俺は花田李來-ハナダリク-…普通の高校生だな…。」



少し考えながら言った李來に海斗が言う。




「ったりめーだろ!(笑)族だったら知ってるって、かなり仲間多いとこはわかんねーかもだけど、大体わかってる。」



「唯奈、李來だって…何か思い出した?」




蒼空が聞く。






「うーん…全然。」




「そんなすぐには思い出せないよね。」





蒼空が言う。





「もし嫌じゃなかったら、俺の知ってる唯奈の過去話そうか?」




李來の言葉に胸がズキンとなった。



「…。」



私はうつむき黙り込む。









聞くために、知るために会ったけど、やっぱり前に進むのに躊躇する。
嫌な過去まで思い出しそうで……。



日々母がDVを受けていたほんの少しの記憶が断片的に残っている。



ある程度大人になり母から聞いた事と重なり、また憎しみが起きたら…。





「おい、大丈夫か?」




俊の声に我に返った。




「あ、うん。」




慌てて返事をした。




「心配すんな、オマエには俺らがいるだろ。」




俊が私のことを悟っているのかのように言う。




そのおかげで少し安心した。




「李來……話してくれる?」




私がそう言うとニコっとして、李來が頷く。



男の人をいつまでも苦手にしていたら、皆にばっかり頼ってしまう。
少しずつでも前に……。




※ 李來の知る過去※




ーーーーーーーーーー




母親の後ろに隠れている3歳くらいの同じ年の頃だと思う女の子。



『ほら、唯奈。李來君よ?仲良くね。』




優しく女の子に話しかけ、目の前に可愛い女の子が現れた。




「僕と一緒に遊ぼう?」



唯奈はそっと頷き、李來は手を差し伸べた。
公園の中に向かい、母親たちはベンチに座り何か話している。




「唯奈ちゃん、こっち来て!」



手を引かれるままに走る唯奈。




唯「これなあに?」



ブランコの前で尋ねてくる唯奈。



「ブランコだよ、座って?」



二人で座り、李來のブランコが揺れ始めた。
唯奈も李來の真似をしてみるが、うまくできない。
李來は唯奈の後ろに回り背を押す。





「しっかり握っててね?」


李來の言葉に従う。
ブランコが動きだし、自然と笑顔になる。



この日が李來との初めての出会いだった。




それから、家も近所だったので、毎日のように遊んでいた。




ーーーーーーそれから、1年が過ぎた頃。




「今日から此処は二人の秘密基地!内緒だよ?」


唯奈と李來の家の中間にある小道から、小さな穴があいている、しきりの壁…その中に入ると使われていない家が1つ。




家の中には入れないけど、中庭と思われる所に出る。
いつしか二人の遊びものが置かれていった。





そんなある日…




「う…(涙)う…グズン……(涙)」



唯奈が目を真っ赤にして来た。



「どうしたの?」




李來は唯奈の頭を撫でながら心配する。




「ママとパパが喧嘩して、ママがお外にいってなさいって(泣)」



わんわんと泣く唯奈を慰める李來。




「僕のおおうちもママとパパが喧嘩するけど、仲良しの証拠って言ってたよ!」



「本当?」




唯奈は泣くのをピタッと止めて聞く。




「うん、ママとパパが言ってたもん。」





自信満々に言う李來に安心した唯奈は、いつも通りに戻って遊んだ。





が、翌日も泣きながら秘密基地に来る唯奈。




「どうしたの?」


前日と同じように慰めながら、問う李來。



「また、喧嘩してるの。ママが叩かれてパパは唯奈も叩こうとしたの(泣)」




李來の言葉が詰まる。




「僕も悪いことしたら叩かれるよ?」




「違うよ…唯奈はなにもしてない。ママを叩かないでって言っただけだもん(涙)」




唯奈が泣きながら訴える。




「そっか…唯奈ちゃんは僕が守ってあげる!」



そう言うと、唯奈は声にならない声で頷いた。
落ち着くと、李來は唯奈を家まで送った。





「あ…唯奈。お帰り…ママは大丈夫よ!」



心配して外に出ていた唯奈の母。
そうは言ったものの…顔や手足にアザが目立った。
が、李來は何も言えないでいた…唯奈が喜んで抱き付いていたから…。



それから数日おなじことが続いたが、李來にはどうすることも出来なかった。




李來は心配になり、親に話した。




「李來…良く聞きなさい?」



父が言う。



李來が頷くと母も食卓テーブルに座った。