最初の頃とは言え、酷いことを言っていた。
明日…ちゃんと謝ろう。
翌朝、二人が迎えに来てくれて、学校に行った。
学校にいる間少し寂しい気がした。
放課後、私はすぐに病院へ向かった。
「あ、唯奈ー!遅いよー、退屈で死にそうだったよー!」
海斗が言う。
「急いで来たんだよ?……蒼空、痛まない?」
「あ、うん。大丈夫。」
まだ元気がないみたい。
「俊……寝てるし。」
亮汰が言う。
私は俊に近付き頬をツンツンした。
目が合ってぶわっと起き上がる俊。
「っっ………いてー。(汗)」
俊が言う。
「ご、ごめん!」
私は焦って謝ると、蒼空を抜かしてみんなが笑う。
「俊、顔なんか赤いけど。」
海斗がニヤニヤしながら言う。
「大丈夫?」
「大丈夫。海斗、うるせー。まず、座れよ/////」
ケラケラと笑うみんな。
パイプ椅子が二つしかないので、私は亮汰と楓に譲り、俊のベッドの淵に座った。
「あ、あの…ごめん…。最初の頃とか、酷いこと言って…。私、族を悪いものだと決めつけて、勘違いして…。」
そこまで言うと、蒼空が口を開いた。
「唯奈にわかってもらえたみたいで、まぢで嬉しいよ。昨日のこと悔しくて悔しくて、どうしようもなかった。でも、唯奈にそう思ってもらえて良かった。」
やっと、笑顔になった蒼空。
みんなも優しく微笑む。
その後、面会時間が終わるまで他愛もない話をして過ごした。
面会時間が終わり、帰ることにした私たち。
三人で廊下を歩いていると、向かいから松葉杖をついて歩いてくる男の人がいた。
少し距離があったが、目が合うと私の心臓が飛び跳ねた。
いや、むしろ、痛いといった感じがした。
理由は分からない…。
ただ…なんとなく、目が合いたくないと思い亮汰に隠れるようにして過ぎ去った。
「どうした?知り合いか?殺っちまった奴か?」
亮汰が聞く。
「ううん、違うと思う。」
「顔色悪いけど?」
楓が言う。
「嘘つくなよ?何かあっても守ってやるから。」
亮汰が真剣に言う。
「ありがとう。だけど、ホントに分からないの。」
二人共不思議そうな顔をするが“なら、ィィんだ”と楓が言ってくれた。
家に着き、思い出そうとするが、考えると酷い頭痛が起きる。
一体なんなんだ。
私、どうしたんだろう。
殺ってしまった相手なら、ある程度覚えているはずなんだけど…。
族っぽくはなかったな………。
見た目で判断は良くないか。
これでも学習したつもり。
これ以上考えても、頭痛がするだけなので、寝ることにした。
次の日も病院へ行った。
昨日会った人とは、幸いまだ会ってない。
良かったと、心の中で思っていた。
いつものように、みんなでトランプしたり話したりしている。
「私、トイレに行ってくる。」
「場所分かるか?」
俊が聞く。
「わかんない。………。」
そう言い、目線を楓に向ける。
「俺、一緒に行くよ、ついでにみんなの飲み物買う。」
笑顔で楓が言ってくれたので、楓と一緒に行くことに。
「トイレ終わっても、ここで待ってて?俺戻ってくるまでね。」
「わかったあー。」
そう言って楓は売店へ向かって行った。
私は、言われた通りトイレを済ませ待っている。
「遅いなー…。」
そんなことを呟きながら、目線を楓の行った方へ向けると、昨日の男が居た。
私はまた苦しくなったので、下を向き目が合わないようにしていた………が、何故か男は私の前で止まった。
「唯奈ちゃんだよね?」
男がそう言ってきたので、ビックリして顔を上げたら、更に息苦しくなってきた。
「俺のこと忘れちゃったの?…。」
悲しげな顔で問う彼。
頭がいたくなってきた。
「俺はずっと待ってたんだよ。え!?大丈夫!?(汗)」
激しい頭痛と共に私は倒れた。
松葉杖の彼-sid-
俺は会ってしまった。
ずっと待ち、探し続けていた子に……………。
俺は花田李來-ハナダリク-
今年高1の16歳。
運悪く喧嘩を売られて、喧嘩に勝ったのはィィが足を折ってしまって入院中。
2ヶ月は松葉杖だ。
特に何もなく平穏に過ごしてきた。
なのに…………今日、会ってしまった。
俺がずっと待っていた人に。
そろそろギブスがはずれると言う医師の言葉に浮かれて、病室へ戻っていたら、前から男二人、女一人が楽しそうに歩いてきた。
誰かの見舞いだろうと、確信があった。
昨日なんだか騒がしくなってたし、少し気になって見たら、族が入院してたし。
何より、制服が一番確信をつく理由だ。
あの制服を見て分からないやつはいない。
族の集う高校…。
そんな奴らとは、関わりたくなかった………が、女と目が合った瞬間、俺は心臓が口から出そうだった。
幼い頃の面影が少し残っている。
唯奈ちゃんに間違いない。
でも、唯奈ちゃんは目が合うと男に隠れるようにして去っていった。
病室に戻り、色んな意味でショックを受けていた。
あの高校に行っていると言うこと。
男のうち一人はきっと彼氏だろう…。
とどめは俺を避けたこと。
そんなに、嫌なのかとひどく落ち込んだ。
次の日、俺は屋上に居て、下を眺めていると、バイク音が聞こえてきて、バイクが見えると、昨日の男二人と唯奈ちゃんだった。
俺はどうしても話をさしたかった。
彼氏が居てもィィ。
ただなにもせず、拒まれ続けることの方が耐えられない。
俺は少し考えてから、下に降りて行った。
考えている時間の方が長かったのか、タイミングを逃してしまったみたいだ。
入れ違いだったかな……。
一度病室に戻り、ナースに聞いてみることにした。
少しして、聞いた病室に行くため歩いている途中、トイレの前で唯奈ちゃんが立っていた。
幸い一人でいるみたいで、俺は少し緊張がほどけた。
勇気を出して唯奈ちゃんに近づくと、俺に気付いてまた下を向き目を合わせてくれない。
それでも、進んで唯奈ちゃんの前まできた。
「唯奈ちゃんだよね…?」
唯奈ちゃんはビックリして俺を見た。
だけど、みるみるうちに、顔を青くする。
そんなに嫌なのかな…。
幼い頃の友達にそんなに会いたくないものなのかな。
唯奈ちゃんも大分変わったみたいだし。
「俺のこと忘れちゃったの?」
もう止まれなかった。
切ない気持ちを殺して聞いてた。
「俺は覚えてたよ。ずっと……待ってたんだよ。………………え?!大丈夫!?」
突然唯奈ちゃんが目の前で倒れた。
俺はその辺にいるナースを呼んだ。
どうしたんだろ…不安だけが募った。
-end-
客観-sid-
唯奈が倒れてパニック状態の李來。
ナースが来て声を掛けても反応しない。
そこに楓が来た。
「てめぇ、何したんだよ!」
いつの楓とは思えない言葉。
「静かにして下さい。他にも患者さんがいるのよ?(怒)」
ナースが怒っている間、楓は李來に問う。
「お前、一体なんなんだよ。」
その言葉に李來は黙ったままだった。
「何とか言えよ。」
イライラしている様子で話す楓。
何もわからないまま楓は医師に呼ばれた。
「お前は来なくてィィ。」
楓が李來を冷たくあしらう。
李來は黙ったまま動かなかった。
楓は中に入っていき、話を聞いていた。