「族は頭が殺られれば終わりだもんな、しっかり立ってろよ?アハハ(笑)」



省吾が笑いながら言う。





「卑怯者。」





私が口を出す。




「あ?誰に向かって言ってんだ、コラ。」




省吾が私の顔を自分に向けた。






「オマエに言ってんだよ!」




「ああん?気が変わった………もう一発で殺せ。狙って刺せよ?」



男が手の汗を拭う。






「腹部と心臓どっちでもィィぞ。」





省吾が言う。




「やめろーー!!!!!!」






私は叫んだ。






「うっ………。」





俊が苦痛に顔を歪める。




「おい、しっかり刺せよ。…後から俺をどうするんだって?俊。ニヤリ」






「やめろって言ってんだろーが、聞こえねーのか?」





私の口が勝手に開く。






「あ?(怒)」




「俊…私は大丈夫だから…殺れよ。黙ってないで、殺ってよ!なんで………なんで殺らないの………。」






声が詰まる…………そっか…………私泣いてるんだ…………。







「誰が何するって?ぁあん?」





省吾が面と向かって言ってきた………私は思いっきり頭突きをして、思いっきり体当たりした。
拘束されてる私はそのまま勢い良く倒れた。







それをきっかけに、みんなが動き出した。






蒼空と海斗が私を起こし、拘束を解いてくれた。
亮汰は起き上がった省吾をぶっ飛ばした。
俊はフラフラのままで、省吾の方へ向かう。
その背後で、男が掛かって行こうとしたのを、楓が殺った。








省吾は慌てて起き上がる。







俊は怒りが爆発したように、殴る蹴るをして、省吾を半殺し状態にした。
気を失った省吾を前に、俊は膝を付いた。





私は俊の元へ行った。






「もう…やめて。俊が血だらけ……死んじゃう。病院に行って、お願いだから。」





俊の前で崩れ落ちる。




「そんなに…心配か。なんで泣くんだ。」






私は口をつぐむ。






蒼空と海斗が俊を支える。
俊が立ち、三人は背を唯奈に向け歩く。






「バカか、オマエ!心配してんなら、素直に言えばィィだろうが。…仲間だろ、唯奈。心配かけんじゃねーよ。」






亮汰が言う。





「私…!!!!族の事ホントに分かってないし、迷惑かけっぱなしだけど、みんなと一緒にいたい。…ワガママだけど、もう独りでさ迷いたくない。みんなと居て気づいた…孤独は嫌だ……。」






楓がそっとたたせてくれた。





「ずっと一緒に居ればィィよ。迷惑だとも、ワガママだとも思ってない。唯奈が居ないとみんなも楽しくない。」



そう楓が言うと、前にいる海斗が言う。




「唯奈、置いてくよー!」





楓も俊たちの元へ向かう。





仲間…………。
私の仲間はみんなだけ…。
改めて感じたよ。
みんなのこと。






先に行く5人に走って飛び込む私。





「いって~……。(汗)」






俊の顔が歪むが、優しく笑っていた。
それを見てるみんなも笑顔だった。




「さ、病院行くよ。」




蒼空が言う。




車に乗り込み急いでむかう。







病院に着いた私たち。



俊が酷く出血していたのが心配。




馴染みの病院だが、流石の医師も驚いていた。




「どうしたら、そんな怪我になるんだ…。」





「ちょっとした喧嘩で…。(苦笑)」




楓がばつが悪そうに話す。






すぐに処置になり、みんな手当てをうけた。






私は掠り傷と打撲だけで済んだのだけど、みんな結構なダメージを受けていた。
よく考えると、かなりの人数と殺り合って、素手vs金属じゃね………。






俊はもちろん入院。




一ヶ月もしないうちに、傷がふさがるだろうって。
幸い相手が臆病で深くはいってないらしい。





蒼空も海斗も入院が決まった。





蒼空は足の骨にヒビ。
海斗はあばら一本。





海斗の場合、入院にはならないんだけど、安静にしてるはずがないからって、強制入院。





その通りだと思う。
流石馴染みの医師。







と、言うわけで、今日から入院。







「はあ。つまんねー。唯奈がせっかく帰ってきたのに。」




ブスーと、頬を膨らませる海斗。




「仕方ねーだろ?オマエが脆いんだから(笑)」





亮汰が海斗に言う。






「ホントだな、情けない。」






蒼空が俯きボソッと言う。





「らしくねーな、なんだよ。」






海斗が更にふて腐れる。





その日はもう面会時間がとっくにすぎていたので、すぐに帰ることになった。





帰り道…亮汰は倉庫にいる奴等が心配だと、倉庫に向かった為、私は楓に送ってもらった。
家につき、私は楓に聞いた。





「蒼空、どうしたんだろうね。」





元気なく最後まで落ち込んでいたように見えて気になっていた。






「蒼空はぁあ見えて、正義感が強いから、今回の事相当悔しかったんじゃないかな。実際みんな思ってるよ。」






「ごめん…。」





私は謝ることしか出来なかった。






「いや、謝らないで♪そういうつもりで言ったんじゃないから。大丈夫、次はこんなことないようにするから!」





「ありがとう…私も気を付ける。おやすみ。」






そう言って、運転手の人と楓を見送り、家に入った。






家に入り、一人考えた。






族なのに、正義感……。






今までそんなこと思う族の人なんて、居ないと思ってただけに、驚いてるのが正直。





龍鬼はホントに族と言うものなのか分からなくなる。
これがホントの族のあり方だとしたら…私は彼らをどれだけ傷付けただろう。







最初の頃とは言え、酷いことを言っていた。





明日…ちゃんと謝ろう。




翌朝、二人が迎えに来てくれて、学校に行った。






学校にいる間少し寂しい気がした。






放課後、私はすぐに病院へ向かった。






「あ、唯奈ー!遅いよー、退屈で死にそうだったよー!」




海斗が言う。




「急いで来たんだよ?……蒼空、痛まない?」





「あ、うん。大丈夫。」





まだ元気がないみたい。





「俊……寝てるし。」





亮汰が言う。




私は俊に近付き頬をツンツンした。
目が合ってぶわっと起き上がる俊。





「っっ………いてー。(汗)」




俊が言う。





「ご、ごめん!」





私は焦って謝ると、蒼空を抜かしてみんなが笑う。





「俊、顔なんか赤いけど。」





海斗がニヤニヤしながら言う。





「大丈夫?」





「大丈夫。海斗、うるせー。まず、座れよ/////」





ケラケラと笑うみんな。






パイプ椅子が二つしかないので、私は亮汰と楓に譲り、俊のベッドの淵に座った。







「あ、あの…ごめん…。最初の頃とか、酷いこと言って…。私、族を悪いものだと決めつけて、勘違いして…。」






そこまで言うと、蒼空が口を開いた。





「唯奈にわかってもらえたみたいで、まぢで嬉しいよ。昨日のこと悔しくて悔しくて、どうしようもなかった。でも、唯奈にそう思ってもらえて良かった。」




やっと、笑顔になった蒼空。
みんなも優しく微笑む。





その後、面会時間が終わるまで他愛もない話をして過ごした。





面会時間が終わり、帰ることにした私たち。






三人で廊下を歩いていると、向かいから松葉杖をついて歩いてくる男の人がいた。
少し距離があったが、目が合うと私の心臓が飛び跳ねた。






いや、むしろ、痛いといった感じがした。
理由は分からない…。





ただ…なんとなく、目が合いたくないと思い亮汰に隠れるようにして過ぎ去った。







「どうした?知り合いか?殺っちまった奴か?」





亮汰が聞く。





「ううん、違うと思う。」





「顔色悪いけど?」





楓が言う。





「嘘つくなよ?何かあっても守ってやるから。」






亮汰が真剣に言う。





「ありがとう。だけど、ホントに分からないの。」





二人共不思議そうな顔をするが“なら、ィィんだ”と楓が言ってくれた。






家に着き、思い出そうとするが、考えると酷い頭痛が起きる。





一体なんなんだ。
私、どうしたんだろう。




殺ってしまった相手なら、ある程度覚えているはずなんだけど…。
族っぽくはなかったな………。





見た目で判断は良くないか。
これでも学習したつもり。





これ以上考えても、頭痛がするだけなので、寝ることにした。






次の日も病院へ行った。





昨日会った人とは、幸いまだ会ってない。




良かったと、心の中で思っていた。





いつものように、みんなでトランプしたり話したりしている。






「私、トイレに行ってくる。」





「場所分かるか?」





俊が聞く。





「わかんない。………。」






そう言い、目線を楓に向ける。






「俺、一緒に行くよ、ついでにみんなの飲み物買う。」





笑顔で楓が言ってくれたので、楓と一緒に行くことに。






「トイレ終わっても、ここで待ってて?俺戻ってくるまでね。」






「わかったあー。」





そう言って楓は売店へ向かって行った。






私は、言われた通りトイレを済ませ待っている。






「遅いなー…。」





そんなことを呟きながら、目線を楓の行った方へ向けると、昨日の男が居た。






私はまた苦しくなったので、下を向き目が合わないようにしていた………が、何故か男は私の前で止まった。






「唯奈ちゃんだよね?」





男がそう言ってきたので、ビックリして顔を上げたら、更に息苦しくなってきた。





「俺のこと忘れちゃったの?…。」





悲しげな顔で問う彼。




頭がいたくなってきた。





「俺はずっと待ってたんだよ。え!?大丈夫!?(汗)」






激しい頭痛と共に私は倒れた。